たちつてとーるさん
あるスタントマンは、「怖がる人の方がスタントに向いている」と言いました。危険と隣り合わせのスタントマンだからこそ、恐れを知っていることでその仕事に安定性をもたらすことが出来るのでしょう。
逆に、危険をなんとも思わない人はスタントには向いていない。仕事としてはどこかで途切れる。
また、棋士には小心者が多いという話を聞いたことがあります。
大胆な知略が求められる将棋でも、相手を怖がり、一手のリスクに思いを巡らせる。
僅かなミスが命取りになる仕事には、恐怖が必要というのはたちつてとーるさんの仰る通りだと思います。
しかし、同時に忘れてはいけないのは、その恐怖が過剰なものになってしまってはいけないということです。
スタントマンなら恐怖が大きくなりすぎると集中力を欠いてしまい、事故を起こしてしまうかもしれない。
棋士なら、相手を怖がりすぎ、一手のリスクを考えすぎると時間切れとなってしまう。
また、騎手という職業も同じだと思います。
恐怖を全く感じない騎手がラフプレーを重ねるなら、大惨事を引き起こすでしょう。
しかし、過剰に恐怖を感じてしまってもそれは気の迷いによる僅かな反応の遅れに繋がり、危険を呼び起こしてしまう。
仕事では、過剰な恐怖ではなく、「正しく怖がる」ことが要求されます。
私は、福永騎手が「後藤さん、もう(ジョッキーを)辞めたほうがいいよ」と切り出そうとしていたという文章を読んで、非常に残酷なことをしようとしていたのだな、と思いました。
後藤騎手はあれだけリハビリを重ねて、やっと騎手に復帰して、また落馬をしてしまって、それで仲間の騎手に「辞めた方がいい」と言われる。こんなに苦しいことはありません。だから、周りの人も「辞めて」とは言えなかった。
福永騎手のコメントをもう一度引用します。
「ダイヤモンドSでのあの落馬のシーン。本当だったら、落ちるような状況じゃなかったと自分は思う。あそこで引っ張れなかったということは、恐怖で体が動かない…少なくとも、自分の目にはそう映った。」
ダイヤモンドSの落馬について、後藤騎手の落ち度に触れている人がもう一人います。
坂井千明元騎手です。以下は坂井元騎手のコメントの引用です。
「先週の土曜日(2月21日のダイヤモンドS)に落馬した時も、前をカットされたらされたで、昔の後藤だったらもっと早く反応してしっかり抑えが利いたはず。落ちるところまではいかなかったと思うんだ。それがワンテンポ遅れていた上に抑えも利かず、結果的に落馬してしまった。ケガをする前のように乗れていないことを、本人は感じていたんだろう。そうとしか考えられない。」
福永騎手がなぜあんな残酷なことを後藤騎手に言おうとしていたのか、こう考えれば説明が付くのではないでしょうか。
福永騎手はダイヤモンドSの落馬を見て、後藤騎手は正しく怖がることが出来なくなっているのだと分かってしまった。
過剰な恐怖を抱えたままでは、騎手を続けることが出来ないと分かってしまった。
恐怖心が全く無い騎手、恐怖心が過剰に有る騎手。どちらも危険なのです。
適度に恐れなければ、騎手には成れません。
まあこれも、福永騎手、坂井元騎手、私の個人的な意見をまとめただけのものです。
後藤騎手の心情も、福永騎手のコメントの真意も、誰にも分からないことですし、別に適度に恐れていない騎手がダメだという話でもありません。
ただ、たちつてとーるさんが指している「恐怖」と福永騎手が指している「恐怖」のニュアンスは少しズレていると感じました。
以下の対応が可能です。
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